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読書記録 の めも用紙

【月曜日の抹茶カフェ】でほっと一息

月曜日の抹茶カフェ/青山道美智子

 

 

昨年の秋に出産し、

しばらく読書の時間は作れなかったけれど

ようやく生活が落ち着いてきたこの頃。

短編集なら読めるかしらと

久しぶりの読書にわくわくしながら

 

心あたたまる12つのお話を楽しみました。

 

 

どの手がひとつでも離れていたら、ここにはたどりつけなかった。どんな出会いも、顔もわからない人たちが脈々と繋いできた手と手の先なんだよ青山美智子,月曜日の抹茶カフェ,宝島社,2021

 

 

これまでの人生の中で一番印象的な出会いというと、

やっぱり、旦那さんとの出会いになるかなぁ。

 

高校入学の日、黒板に貼られた座席表のとおりに座ったとき、

『隣にいた人』が今の旦那さん。

 

まさかその14年後の春にも

『隣にいる人』になるなんて、その瞬間には思ってもいなかった。

 

なんだか不思議。

 

入学当初のあいうえお順に並べられた座席が

隣同士だったから仲良くなった、

ということについて深く考えたことはなかったけれど

 

誰かしらが関わってクラスが編成されただろうことは間違いなくて、

名前も知らないその方々のさじ加減でたまたま出会った。

不思議なご縁。

 

 

これまで出会ってきた方々とのいろいろな出会いも

どこかで何かが違っていたら、あり得なかったものなのだと思うと

ありがくて、もっと大切にするべきものに思えてくるし

出会いの後ろ側にいる"誰か"の存在にもちゃんと感謝したくなった。

 

(その"誰か"は

自分の行動がきっかけで人の幸せが生まれただなんて

思ってもいないのだろうだけれども)

 

 

 

『月曜日の抹茶カフェ』の短編には、

例えば誰かが亡くなったり事故にあったりするような、心がザワザワするお話はなく、

ほっこりあたたかな気持ちになるものばかり。

心の休憩にぴったりなお話たちでした。

 

忙しない日常の隙間で、ほっと一息つくのにおすすめです。

 

【愛なき世界】

愛なき世界/三浦しをん

 

 

 

洋食屋で料理修行中の青年と、植物の研究に没頭している女性のお話。

恋愛小説というよりも、お仕事小説という感じ。

 

わたしも
植物が好きなので、
いつか読みたいと思っていた物語。

 

 

 


台風で倒れた庭の花が
何日かたって
起き上がっているのを見ると、
頼もしさを感じるし、


春の山を走ると、
山のあちこちから
芽吹きの力が湧き出ているのを感じて
ぞくぞくする。


風邪を引きそうなとき
葛根湯を飲んで身体があたたまると、
植物の力に感激するし、


野菜スープを作るとき、
植物のおいしさに
とろけてしまう。


スパイスカレーを作るときには、
植物の刺激的な一面に
惚れ惚れする。


そしてなにより、
光によってエネルギーを生み出し、
大地に深く根を張り
たくましく
自立して生きている姿に
憧れてしまっている。


小説に登場する人々の
植物の溺愛ぶりとは比べ物にならないけれど、

わたしも、植物が大好き。

 

 

 

 


作中の、

植物は光合成をして生き、その食物を食べて動物は生き、その動物を食べて生きる動物もいて…、結局、地球上の生物はみんな、光を食べて生きている。

暗闇ではなく光を生きる糧とする。

 

という一節を読んだとき、

心があたたかさに包まれた。

わたしが植物を好きな理由の1つを
ぴたりと、
それも、
素敵な言葉で、
肯定してもらえたようで、
なんだか嬉しくなった。


愛なき世界は、
愛にあふれた、素敵な小説でした。



P.S.
この本を読んで改めて、
わたしがいつも走る山道の植物たちに
抱いている感情は、
「愛」であることを確信しました。

 

【ランナー】

ランナー/あさのあつこ

 

 

 

 

 

爽やかさや、美しさだけじゃなくて
ドロドロした暗さとか影が
しっかりと書かれているから
そのぶん
走っているときの主人公の姿が
とっても美しいものとして
イメージできた。
主人公は家庭のことでも悩みや葛藤を
抱えてる。
でも
走っている瞬間は
それらのものから解き放たれてた。


ただ走る。
そのことで心が身体が
バランスを取り戻していく感じ、

わかるなー。

 

走ることに条件はない。ただ、肉体と大地があれば事足りる。

この肉体、この大地、それだけで全てが満たされるのだ。単純で底知れない快感が、大地から湧き上がり、肉体を抱擁する。走るとはそういうものだ。

 


主人公のセリフ。

 

こんなセリフが出てくるなんて。

 

たしかに、走っているとこんな気分になることがある。

なんで知っているのだろう。


あさのあつこさんって
どんな人なんだろう。
彼女もランナーなのかしら。

 

 

 

 

【それからの僕にはマラソンがあった】

それからの僕にはマラソンがあった/松浦弥太郎

 

 

 

多忙や人間関係により心身ボロボロになったときに走りはじめた、「暮らしの手帖」の前編集長、松浦弥太郎氏著。

わたしも、
心身ボロボロになったことがあり、
陸上部でもなかったのに突如走りはじめた、
という似たストーリーを持っているからか
松浦さんの言葉には共感できるところが多かった。

走っていると
ふだん使わない感覚が働くようになる。

空の色や雲の様子、風の匂い。

それらに心を向けているうちに

自分の頭や心を支配していたことから解き放たれて、リラックスできる。

ランニングは心と身体のコンディションを整えてくれてる。

 

 

いつも新しいことに、次から次へとチャレンジしていきたいと思っています。そのためには強靭な身体がどうしても必要なのです。

 


とても、わかる。

 

やりたいことがあったとき
心と身体の状態がよいことに越したことはない。

身体の声を無視して
精神論でどうにかしようとすると
不都合が出てくる。

心の声を無視しようとすると
こんがらがってうまくいかない。

心に余裕がないと素敵なものを見落としてしまうし
体力に余裕がないと、素敵なことが眠っている場所までたどり着けない。

日々の中に転がっている
心が躍るような素敵なことを見つけたいなら、

心身のコンディションを整えること、
ほんとに鍵だなって思う。

 

最近走り始めたよ、っていう人におすすめ。

走ることのよさを言語化してくれているから

きっと、ビビビッとくるはず。

【SHOE DOG】

SHOE DOG/PHIL  KNIGHT

 

 

ナイキの創業者フィル・ナイトのお話。

24歳で世界を旅して
25歳でランニングシューズの会社を立ち上げた
フィル・ナイト。

成功するまでに
ありとあらゆる困難にぶつかった彼だけれど、

彼の
走ることや靴に対する
アツい想いに心打たれた。


私は走ることを信じていた。
みんなが毎日数マイル走れば、世の中はもっと良くなると思っていたし、このシューズを履けば走りはもっと良くなると思っていた。
この私の信念を理解してくれた人たちが、この思いを共有したいと思ったのだ。
信念だ。信念こそは揺るがない。


揺るがない信念を胸に、
夢を実現した
フィル・ナイトのこの物語は

情熱の美しさを
改めて教えてくれる。

情熱を持って、
一心に勝利を追い求めた
彼の人生は
さながら、スポーツのよう。

彼の人生はスポーツで、彼はアスリート。

目標に向かって突き進む
アスリートたちが皆、
美しくかっこいいのと同じで

フィル・ナイトも美しくかっこいい。

この本を読み終わったとき、

素晴らしい試合を
観戦した後のような、
なんとも言えない高揚感で胸がいっぱいになった。

 

ブラボー!

 

アツい気持ちになりたいときにおすすめです。

【走ることについて語るときに僕の語ること】

走ることについて語るときに僕の語ること/村上春樹

 

 

もう、何度か読んでいる。



靴音と、呼吸音と、心臓の鼓動とが絡み合って、独特のポリリズムを作り上げていく。



この部分に
やっぱり
ぐっと惹かれる。

異なる複数のリズムの同時進行、
ポリリズム


わたしの場合

山を走っているときは

土を蹴って走る
樹々を眺める
ぼーっとする、
の同時進行が

心地いいポリリズム


日々の中では

走る
読む
話す

のバランスが取れていると
それはとても
心地いいポリリズム

 

 

読むと走りたくなります。

走る習慣のない人にもおすすめです。

 

 

 

村上春樹著のこれもおすすめ

【走る?】

走る?/東山 彰良,中田 永一,柴崎 友香,王城 夕紀,佐藤 友哉,遠藤 徹,前野 健太,古川 日出男,岩松 了,小林 エリカ,恒川 光太郎,服部 文祥,町田 康,桜井 鈴茂

 

 

14つの短編集。
すべて"走る"ことがテーマのお話。

14人の主人公が
それぞれの理由で
走ったり走らなかったり
走るようになったりしてるのがおもしろかった。


わたしが特に気に入ったのは
『パン、買ってこい』
っていう冒頭のお話。

お昼休みにパンを買いに
パシリを強要される話なのだけれど

途中からの展開が
ほんとうにおもしろい。
ランナーには特におすすめです。


一生、しらなかったかもしれない

 



走る途中に見る、
いろんな景色や空の色。

走るときに浮かぶ
いろんな感情。
走ることの素敵さ。

そういうことに
"出会えた喜び"を

クスッと笑いながら
思い出してしまう、
そんなお話だった。

 

 

 

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